【NYCAインタビュー Vol.6】中村春菜さん〜人を助ける仕事に尽力し、ワーキングマザーとして精進したい〜
Yuki Abe
【NYCAインタビュー Vol.6】
中村春菜(なかむらはるな)さん
NYキャリアアカデミーのマネージャーとして活躍するかたわら、2017年5月にグローバルキャリアカウンセラーの資格取得、9月には第二子をご出産された中村春菜さん。これまでのキャリア、そしてワーキングマザーとして仕事と子育てを両立する秘訣をお伺いしました。
インタビュー・原稿 By NYCAライター 阿部由季
Q: これまでの経歴を簡単に教えてください。
佐賀県で生まれ育ち、高校卒業後に正規留学のため渡米しました。小学生の頃、父の仕事の関係で沖縄に4年間住んでいた経験から、異文化や英語に興味を持ち、留学を志しました。最初の2年間はコミュニティカレッジに通い、その後はニューヨーク州立バッファロー大学に編入学しました。専攻は会計学です。
卒業後はニューヨークシティ(NYC)にある大手監査法人のKPMGに入社しました。その後は東京で外資系企業の人事や人材会社でのグローバルキャリア支援業務に従事し、現在はNYキャリアアカデミーでマネージャーを務めています。
Q: ファーストキャリアを会計士に選んだ理由はなんだったのでしょうか。
NYCで働くことが高校時代からの夢だったんですよね。大学の専攻は、この夢が叶う可能性のもっとも高い会計学にしました。会計は専門性が高く、就職できる確率が高いですし、就職できれば就労ビザの取得もしやすいです。就職活動でもNYCで働くことを軸にしました。努力の結果、ボストンキャリアフォーラムでKPMGのNYオフィスの監査部からオファーをいただくことができました。
Q: 会計士からキャリア支援の道に大きくキャリアチェンジしたのには、どのような背景があったのでしょうか。
就職によって、NYCで働くという長年の目標をかなえてしまったわけです。そこで次はどんな目標に向かって頑張ろうかと考えたんです。監査の仕事に、こだわりがなかったんですよね。
KPMGにいた頃、クライアントのさまざまな部署の人と働くことがあり、女性の人事部長の方と知り合いました。人事の仕事は社内で一緒に働く人がクライアントなんですよね。自分の会社で働く人のことを考えて、会社全体でよくしていく、というところに興味を持ちました。
また会計の仕事は人と触れ合うことが少なく、1日中パソコンの前で作業することがメインです。私はそれよりもっと人と寄り添う形で働きたいと思い、その後の転職活動では「人事」を軸にしました。
Q: その後はKPMGを退職されてから、ニューヨークに戻るまではどのようなキャリアを歩まれたのですか。
KPMGを退職した直後は、東京の証券会社でまず監査の仕事を始めました。派遣で働きながら、同時に1年ほど転職活動をしていました。そしてオランダ系外資企業の人事部に転職しました。
ここでは給与計算をすることが主な仕事でしたので、会計のキャリアが役立ちました。ただ業務のほとんどをパソコンの前に座ってする、となりの同僚や上司とも、メールでやり取るすることが多く、、、自分が当初求めていた仕事の環境とは「何かが違う」と思っていたんです。
そんなときに人材会社で働いていた大学時代の友人から「グローバルな経験があり、英語が堪能で、人事の経験がある人を探している」というお話をいただきました。上司の方に会った際に、「ここで頑張っていきたい」と感じて転職を決意しました。そして、ASEAN地域から日本に留学している大学生のキャリア支援業務を担当することになりました。
Q: 東京からNYへ戻るきっかけとなったのは、どんな出来事だったのでしょうか。
NYキャリアアカデミー代表の大澤から、「アメリカでキャリア支援の仕事をしないか?」と声を掛けてもらったのがきっかけです。大好きなNYでまた仕事ができるということで、ふたたびアメリカで働くことを決めました。 自分自身も留学していた経験から就職活動の大変さを知っているので、少しでも力になれれば、と思いました。
そしてNYで今の主人と出会い、結婚することになり、その後まもなく妊娠もわかりました。もともとは日本に戻る予定でしたが、結婚を機にアメリカに残ることになったんです。永住権など移住関係の手続き、出産などを経て、2016年の夏から本格的にワーキングマザーとして働き始めました。
Q: 現在ではふたりのお子さんのお母さんな中村さんですが、ワーキングマザーとして働くことの大変さ、逆に楽しさや面白さはどんなところですか。
子供に負担をかけずに仕事をすることが大変ですね。例えば子供が病気になったとき、仕事とどのように折り合いをつけるか難しいときがあります。物事の優先順位をつけて、効率的に動かないといけません。母親はひとりしかいませんから、どんなときでも子どもが頼れる存在じゃないといけません。
働くことでさらに私生活に「メリハリ」がでて、1日1日を大切に過ごせることが、働くことの利点だと感じています。公私ともに誰かに必要とされるのはとても幸せなことだと感じます。
Q: ワーキングマザーとして子育てをする上で、中村さんご自身で決めたルールはありますか?またご主人と決めたことはありますか。
夫婦でコミュニケーションを密に取ること、スケジュール管理を徹底することはとても大事にしています。お互いに出張が多い仕事をしているので、どの日に何があるかをクリアにし、しっかりと共有します。
このふたつができていないと、子どもに負担をかけ、夫婦の中でスケジュールが合わないといった問題が起こるんです。以前、同じ日程で出張が入っていたなんてこともありました。となると、どちらかが仕事を調整して家のことをしないといけなくなるので、お互いの仕事にも影響が出てくるのです。
家族や友人の助けを借り、コミュニケーションをしっかり取ることでスケジュール管理を徹底させることは、ワーキングマザーとしてとても重要なことだと思っています。
Q: NYキャリアアカデミーというキャリア支援の会社で働くことの醍醐味は?
自分らしく働くことができることです。裁量で任せていただける部分も多く、とても楽しいです! また一緒に働く仲間の多くが私と同じワーキングマザーであることも心強いです。刺激をもらえて、大変さも分かち合え、お互いのことをよく理解しあえる環境があるのは、ありがたいものです。
上司が男性だと、子どもがいることで大変なことをなかなか理解してもらえないとよく聞きます。たくさん説明をしなくても、すぐに大変な状況をわかってもらえるのは、ワーキングマザーにとってとても働きやすい環境だと思いますね。
Q: 日本では東京、アメリカではニューヨークでの就労経験をお持ちですが、 働く環境という意味で、それぞれの良いところはどんなところでしょうか? 逆に改善されたら良いと思うことはありますか。
日本は社員同士のフォローが徹底している点がいいところだと思います。当たり前のことかもしれませんが、他の社員の机でなっている電話を取ることがあります。アメリカではありえません。日本では、当事者がいない間の仕事を助けてあげようとする文化があると思います。フォロー体制があるから、新卒が育ちやすい土壌になっているのではないでしょうか。
ただ、日本ではコミュニケーションが複雑で多様なので、業務や責任の所在が明確ではなかったり、メールのやりとりの中でも行間を読む、みたいなこともあり、効率的に業務をすることが大変なことがあります。何が重要で、相手に何を伝えたいのかがわかりにくくなってしまうんですよね。そしてミスコミュニケーションや長時間労働につながるのだと思います。
一方でアメリカの仕事文化の良い点は、無駄を徹底的に省くことでしょう。メールひとつにしろ、ポイントだけを的確に伝えます。いい意味でJob Descriptionに書かれてていることしかしないので、無駄もありません。しかしポジションに見合ったパフォーマンスを発揮できなければ、いつ解雇されるかわからないシビアな世界でもあります。
また、アメリカでは育てるという感覚はあまりありません。新卒から即戦力として働ける人材を採用するので、大学在籍中に多くの経験やスキルを得る必要があるのでプレッシャーも大きいです。日本のように親身に相談にのってくれる上司はそうそういません。
Q: 学生時代の自分にアドバイスするとしたら、 どんなアドバイスをしますか。
たくさんの活動に取り組み、自分が住む地域の人とコミュニケーションを楽しんでほしいです。いろいろな人種、年齢の人と知り合って、自分の人生観を広げてみたら、今後の人生も変わってくると思います。
私自身も、大学時代は自分の生活に精一杯でしたが、大学という狭い世界でしか留学生活を送れていなかったと思います。なので知らないことも多かったなと、今になって思うことがあります。
Q: 中村さんにとってのキャリアゴールとは何でしょうか。どのようにしてキャリアを積んでいきたいと思いますか。
正直、これからもまだまだキャリアを積む必要があるので、ゴールは見えていません。ただ、生涯現役という言葉に憧れます。いくつになっても、やりたい仕事をし、生きがいとしてのキャリアを積んでいきたいと思います。
今は、学生へのキャリア支援の経験をもっと積んでいきたいと思っています。誰かのために働くこと、必要とされることは、とても幸せなことだと思います。使命感を持って働くことこそが自分が輝けると思うからです。そして楽しく仕事をすることがとても大事だと考えています。
Q: 大学生、若手社会人へのメッセージ
今ある時間を有効に使ってください。インターネットの情報に埋もれずに、自分の目で見て、肌でかんじて、自分なりのキャリや生き方を模索してほしいです。一日一日を大事に過ごしてください。